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■ 月 光 浴
おぼろ月が川面を照らす気持ち良い夕刻。
薄墨色の闇が静かに降りる中、月明かりを頼りに上流に向かってキャストし続けました。暫らくすると小型の山女魚が静かに姿を見せてくれました。月光に照らし出された魚体は、いつもより神秘的な輝きを放っています。
山女魚から目を離し川面を見ると、雪のような真っ白い虫たちが、せわしくせわしく川面を飛翔しています。まるで春霞のように。
耳を澄ますと、「ぴしゃ、ぴしゃ」というスプラッシュライズの音が川のあちらこちらから聞こえてきます。山女魚たちは、この極小の虫を目指して無心にライズし続けているのです。
持ち合わせていた#18のミッジパターンを何度キャストしても、もう山女魚たちは見向きもしてくれません。マイクロパターンのミッジに狂奔しているのでしょう。そのとき私は、月光に時折反射する山女魚たちの飛沫を見ながら、亡羊と川面に佇んでいました。
なぜかこの場に佇んでいること、そのことだけで幸せな気持ちになったイブニングの釣りでした。 |
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